VR/ARで実現する革新的な安全教育|製造・建設・物流業の事例・費用

現代の労働環境において、効果的な安全教育は欠かせません。

最新の技術であるVR (バーチャルリアリティ) やAR(拡張現実)を活用した安全教育手法は、従来の方法に比べて格段に効果的です。本記事では、VR安全教育の特長や導入事例、具体的なコンテンツ内容について詳しく解説します。

VR/AR(MR)安全教育の特長

まず、VRとARは、いずれもデジタル技術を活用して現実世界に新しい体験を提供するものですが、アプローチには大きな違いがあります。

  • VR:ユーザーを完全にデジタル環境に没入させる技術で、仮想空間内で全く新しい世界を体験させます。専用のヘッドセットを装着することで、視覚や聴覚がデジタルに置き換わり、現実世界との接触が遮断されます。
    安全教育を行う場合、自社の工場・現場や、あるいはサンプルの危険な工場・現場をすべて3DCGで再現し、体験する形になります。
  • AR・MR:現実世界の上にデジタル情報を重ねる技術です。スマートフォンやARグラスを通じて、現実の風景に仮想のオブジェクトや情報を重ねて表示することで、現実世界との関わりを維持しながらデジタル情報を追加します。
    安全教育を行う場合、自社の工場・現場において、危険な区域に従業員が入った際のアラート表示や、仮想の危険なシーン(落下物など)を3DCGで表示する形になります。

この違いにより、VRは没入感が重視されるシミュレーションやトレーニングに、AR・MRは実世界の情報を補完するための教育や業務支援に効果的に活用されています。

※関連記事:業界別・VR研修/訓練の最新事例|導入方法や費用・メリットを解説

VRを活用した安全教育/危険予知

VRを用いることで、実際の危険な状況を再現し、リアルな体験を通じて安全意識を高める教育が可能です。

例えば、

  • 工場での重機操作のシミュレーション
  • 火災や爆発などの緊急事態
  • 高所での作業中の落下

などをVR内で安全に体験させ、事故の発生要因への対応方法などを学ばせることができます。

これらの事故のリスクを負わずに、トレーニングができる点が魅力です。

※関連記事:【2024年最新】製造業・工場のVR活用事例と導入プロセス・費用

※関連記事:VRとは何か?仮想現実の仕組みと活用事例を徹底解説

AR・MRを活用した安全教育/危険予知

ARは、現実の作業環境にデジタル情報を重ねて表示することで、作業現場での安全性を強化します。例えば、

  • 工場や建設現場で危険区域や作業手順をリアルタイムに可視化し、作業者に注意を促す
  • 機器の操作手順や安全確認をARで提示し、視覚的なサポートを通じて作業ミスを減らす

現実世界とデジタル情報を組み合わせることで、即座にリスクを認識できる教育が実現します。

MRによる安全教育のイメージ

MRデバイス(Meta Quest3など)を利用すると、実際の空間(床・壁・天井など)に合わせてリアルなコンテンツを表示することが可能です。

よって、例えばMRデバイスを装着し、工場内を歩くと

  • 物陰から人やフォークリフトが突然出てくる
  • 上から鉄パイプが落ちてくる

といったコンテンツを作成できます。

従来VRを活用した安全教育コンテンツは、すべて3DCGで作るためコストが嵩んだり、あるいはサンプル(自社の工場ではないコンテンツ)での体験でしたが、これらの機能により、自社の工場などで没入感の高いコンテンツを開発できるようになりました。

高い学習効果が期待できる

VRやAR/MRを使用することで、従業員が実際に危険な状況を疑似体験でき、より深い理解と記憶が促されます。

VRは、現実世界では再現が難しい危険な状況や、実際に体験することが難しい状況を安全に再現することができます。

例えば、高所作業や重機操作、化学物質の取り扱いなど、従業員にとって危険が伴う作業をVRで疑似体験することで、安全意識の向上やリスクに対する理解を深め、かつ従来の紙媒体や映像教材よりも記憶に残りやすく、学習効果を高めることが期待できます。

また、AR/MRはリアルタイムで危険をユーザーに知らせることができるため、即効性のある対応が可能になります。

VR・AR/MR安全教育の効果と費用

まずは費用ですが、

  • 出来上がったアプリ(サンプルの工場・仮想危険シーンなどのパッケージ)のものを導入する場合:100~500万円程度
  • フルスクラッチで自社向けのコンテンツを開発する場合:300万円〜

が目安となります。
※いずれも初期コスト。ランニングコストはベンダーの提供方式/価格設定次第。

また、効果への考え方ですが、導入に際して初期導入コストは発生しますが、教育の質が上がり、長期的には事故の予防や人件費の削減につながることは間違いありません。

実際の工事現場で行う安全教育には、実際に現場で安全対策を講じるための設備や人員、時間などが多く必要でしたが、VR安全教育では、仮想空間で安全教育を行うため、人員コストや向上の利用に係るコストを大幅に削減することができます。

また、安全教育は、従業員がいつでもどこでも学習できるため、教育時間の短縮にもつながります。さらに、VR安全教育は、従業員が安全な環境で繰り返し練習できるため、事故のリスクを軽減し、安全な作業環境を実現することができます。

なにより、何にも変え難い人命や怪我のリスクの減少に繋げられる点は大きいでしょう。

VRやAR/MR安全教育コンテンツの導入・見積もり相談

当メディアの運営元・株式会社Forgersは、製造・通信・小売業など幅広い業界の企業に対して、VR/ARやデジタルツインの実装・コンサルティング支援を行ってまいりました。

様々なVR/ARデバイスを用いて、NTTドコモ、アイシン、ニトリ、NTT東日本などのXR開発や、大手化学メーカーの「工場のデジタルツイン化」も支援しております。

XRを活用した研修・トレーニングアプリの企画・設計や開発も行いますので、内容や費用に少しでもご興味がある方は、こちらからご相談ください。

利用デバイスの例

VR安全教育向けデバイス:Meta Quest 2

Meta Quest 2はMeta社が提供するVRデバイスで、スタンドアロンで動作する(PCや高性能な外部機器が不要)利用しやすいデバイスです。

価格も3万円程度と大変リーズナブルです。

関連記事:【完全ガイド】Meta Quest 2の特徴と使い方|Meta Quest 3との違い・アクセサリー・出来ることを徹底解説

AR/MR安全教育向けデバイス:Meta Quest 3

Meta Quest 3は、現実空間に対して3DCGを投影できるMR(Mixed Reality=複合現実)デバイスです。

PC接続不要のスタンドアロン型デバイスであり、かつ価格も10万円以下で設定されており、導入・活用しやすく大変おすすめです。

関連記事:【最強コスパ・高すぎる完成度】Meta Quest 3を徹底解説|Quest 2との比較・特徴・何ができる?

ANA:整備士の安全体感教育にVRを導入

ANAホールディングスは、2020年2月26日にVR技術を活用した航空機整備士向けの危険予知訓練を導入しました。この訓練は、航空機整備中に発生し得る危険をリアルに再現し、整備士が安全に対する意識を高めることを目的としています。従来の研修では、座学やシミュレーションに限られていましたが、VRを活用することで、実際の現場に近い環境での訓練が可能になりました。これにより、事故のリスクを低減し、効率的な訓練が行えるようになっています。

訓練では、航空機のエンジンや翼の周辺での作業中に発生する可能性のある事故を仮想体験し、実際に起こった場合の対処法を学ぶことができます。ANAは、今後もVRを活用した安全教育の普及を進め、他の分野への展開も視野に入れています。

ANAのリリースはこちら

日造協:フォークリフト災害をVRで体験(製造・工場)

日本造船協力事業者団体連合会は、VRを活用した安全行動の喚起や災害防止教育を行っています。

2024年度からは、フォークリフトによる人との接触・店頭災害体験コンテンツも追加され、指差確認の徹底・一時停止ルールの浸透など、工場内での安全を促しています。

関連記事:【製造業・工場のAR/MR/VR活用事例】メリットや導入のポイントを解説

※リリースはこちら

JR東日本:インフラ・メンテナンスのVR安全教育

JR東日本では、安全教育の一環として、仮想空間内で過去の重大事故を疑似体験できるVR安全教育ツールを導入しました。

背景には、世代交代によってベテラン社員が減少し、事故の本質や教訓を伝える機会が少なくなっていることが挙げられます。開発されたシステムは、2014年に発生した「川崎駅構内列車脱線事故」を再現し、事故の背後要因や安全対策の重要性を学ぶためのものです。

このツールでは、ヘッドマウントディスプレイを使用し、工事専任管理者や列車運転士など異なる視点から事故を体験できます。

また、リアリティを高めるために実際の駅や工事現場の音声・動作が忠実に再現されています。新入社員や他支社、協力会社の従事者にも広く活用され、事故防止の意識向上に貢献しています。今後はさらなるシナリオの追加を行い、全体の安全性を向上させるそうです。

リリースはこちら:https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/108_jirei05.pdf

明治:工場の安全教育VR

大手食品メーカーの株式会社明治は、TOPPANの安全教育VRパッケージ「安全道場VR」を導入しました。

安全道場VRでは、実際に起こり得る危険な作業を仮想空間で再現し、正しい作業手順を学ぶことができます。

中でも、株式会社明治では「カッター切創」と「高所作業」の2つのコンテンツが多く使われているとのこと。

リリースはこちら:https://solution.toppan.co.jp/newnormal/contents/safetydojovr_column02.html

VR/AR安全教育の導入フロー

お問い合わせと初回相談

まずはお問い合わせいただき、現場の状況や課題に応じた初回相談を実施します。

VR・AR安全教育を導入する際には、まず、現場の状況や課題を把握することが重要です。お問い合わせいただいた後、お客様のニーズや課題をヒアリングし、VR・AR安全教育がどのように役立つのか、具体的な導入プランをご提案いたします。

デモンストレーションと試用

デモンストレーションを通じて、実際のVRコンテンツを体験していただき、その効果を確認します。

VR安全教育の導入を検討される際には、実際にVRコンテンツを体験していただくことが重要です。デモンストレーションでは、お客様のニーズに合わせたVRコンテンツを体験していただき、VR安全教育の効果を実感していただけます。

本導入とトレーニング

本格導入の際には、十分なトレーニングを行い、従業員がスムーズにVRを利用できるようサポートします。

VR・AR安全教育を本格導入する際には、従業員の方々がスムーズに利用できるよう、適切な説明・講習会が必要です。

当社がサポートする場合、VR・AR機器の使い方やコンテンツの操作方法、安全教育の内容などを丁寧に説明いたします。また、導入後のサポート体制も充実しており、お客様が安心してVR安全教育を導入できるよう、万全の体制でサポートします。

まとめ

VR安全教育は、よりリアルな体験を通じて従業員の安全意識を高め、効果的な教育を実現します。

初期導入にはコストがかかるものの、長期的には事故の削減や業務効率の向上に貢献します。現代の労働環境に求められる次世代の安全教育手法として、お勧めいたします。VR安全教育は、従来の安全教育では実現できなかった、よりリアルな体験を提供することで、従業員の安全意識を高め、効果的な教育を実現します。初期導入にはコストがかかりますが、長期的には事故の削減や業務効率の向上に貢献するため、現代の労働環境に求められる次世代の安全教育手法として、お勧めいたします。

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